え?わずか数年で新たな身体を獲得した学生は効果を実証している

太極拳は入門10年といわれます。他の内家拳であれば、短いもので3年、あるいは長くて7年とされるのですが、太極拳はそれらに比べて長すぎるようですね。

先生も焦ると効果が出ないと太鼓判?を押してくれました。わずかなものでも効果が出るまで最低2年などと脅された記憶が残っています。

そんなに時間がかかる技術なら、少し考えものかも知れません。しかし、必ずそんなに時間が掛かるのとは言えない事例がありますので、ここでご紹介したいと思うのです。

初めて彼に出会ったとき、どす黒くくすんだ表情が印象的な学生でした。少し歩くだけで汗をかき、息を切らしていたのを忘れられません。一日練習に参加すると翌日は学校を休まなければならないほどだったと言います。

彼は確かに優秀な成績をとっていたまじめな学生ですが、学業とスポーツで疲弊してしまっていた彼の身体が問題です。それが老化です。若さが身体を維持するために用いられて、活動力が不十分になっている感じです。

勉強する時の姿勢は気を頭に滞らせます。意識を集めると神を生じますが、神をもっとも生じやすいのは眼だと言われます。勉強の時に生じた神が気を集めますが、姿勢が悪くて中丹田に導けず、上部に滞ってしまいます。

気に枯渇した身体をスポーツで鍛えれば、ストレス発散してリフレッシュできるとは限りません。スポーツも身体にとってはストレスの一種です。最初から頭に気が滞った状態なら身体は気が枯渇した状態です。そのような状態ではスポーツは過酷な試練に過ぎません。

結果として若いのにスタミナなし、根性なしの汗っかきといういかにも現代の若者ができあがります。そのような状態で先天気が枯渇すれば、新たに活力を産出することもできず、自宅から出られなくなっても当然かも知れません。

彼は学校のイベントで太極拳に入門することを決意しました。太極拳なら身体運動として強度が低いので、始められるだろうと考えたようですが、これはお年寄りの入門動機とまったく同じです。ただ彼が違っていたのは指導に従ったという点でしょう。

身体的・精神的な限界を感じての入門はごく普通です。激しいスポーツは強い身体と強い精神力を要求します。スポーツが必要だと感じるのは身体や精神がダメージを受けているときですから、なんだか矛盾しているように思えますよね。

太極拳は姿勢を保つことを中心に、練習をします。姿勢を変えるのは身体にとって小さくないストレスです。スムーズに姿勢を変えられるなら、それは身体に対して良質な刺激を与えられる運動になるのです。

丹田を理解してから実践するのが大切な要領だといえます。脱力してしまったら、よろよろとふらつくではないかという質問に対する答えはこれで十分でしょう。

寄りかかるので脱力しリラックスできて、しかもふらふらしないという矛盾が解決します。ですから寄りかかるための丹田を最初に理解しなければなりません。

若者らしい身体とはどのようなものでしょうか。身体が精神を支えるのに十分な身体だといえると思いますが、皆さんはいかが思われるでしょう。

柔らかく動く身体はスムーズな思考を妨げず促進します。彼の反応はかつての重苦しさを精算して、打てば響くような応答を見せるようになりました。

落ち着いた雰囲気を身にまといます。雰囲気は形や力では出せない内功の表れです。東洋医学では身体の状態と精神とは相関していると考えます。外に張り出す気配は若さの印です。気が十分に足りてくると、身体の中から外に張り出すような力を感じます。

このような効果は丹田の理解と実践から効果が生まれますので、修行期間はそれほど大きく影響はないようです。