太極拳の内功は丹田呼吸を育てる!拡縮運動を繰り返す丹田の力

現代人に上手に立てない人が多いのはどうしてでしょう。むしろ大正時代や昭和初期に生まれた人の方が、足腰が丈夫であると思えます。

それでも今や高齢者となった丈夫な人たちでも、腰痛や膝痛に悩まされているのは事実です。ほとんどの場合、高齢化に伴う身体的症状で片付けられているようです。

ところが、私のところに相談にくるのはそのような高齢者ばかりではありません。むしろ若い人たちが多いかも知れません。大学生たちの多くは腰痛を持っているようです。

彼らを立たせてみると、非常に「姿勢が良い」といえそうです。腰を引き、背筋を伸ばしてまっすぐに立っているように見えるのですが、そこが実は問題を抱えている証拠かも知れません。

人間の身体は四足歩行の状態から変化してきたと言われるように、脊椎も骨盤もまっすぐに接続していません。それぞれが少しずつ丸みを帯びて前後上下に繋がっています。

骨と骨の接続面の向き合い方を考えれば、棒を立てたような姿勢は極めて不自然ではないでしょうか。わずかに反った形になるように繋がるはずです。しかも間には必ず軟骨などの仕組みが潤滑するように用意されています。

「良い姿勢」が腰痛の原因だったという説が提示されています。いわゆる良い姿勢が硬直化した結果、さまざまな症状を生み出しているそうです。

良い姿勢では身体は柔らかく動けないのは当然でしょう。骨格を支える筋肉群は特定の状態の緊張をし続けているのです。筋肉に負担を大きく掛けるトレーニングをやり続けているのと同じです。

緊張させるのみで弛緩させていない運動パターンがむしろ悪い結果をもたらすのは、トレーニングの世界では知られています。弛緩させないと筋肉の出力は低下してしまいます。

それでもストレスを掛け続けて、スタミナが尽きて、緊張に耐えられなくなった途端、身体は一気に老化するのではないでしょうか?いわゆる身体がついてこない状態ですね。

そもそも背筋を伸ばすと腰が反ってしまいます。反り返った腰は内臓を圧迫し続けます。そのまま就寝すると、今度は重力によって内臓はさらに圧迫されます。それに耐えられるとすれば、金属製のような堅く固定された内臓でしょう。

内臓の位置は固定されていません。むしろ腹膜の中でつり下がっているイメージです。ですから何かを食べると膨らみ、大きさを変化させることが可能なのです。

言い替えれば締めたり緩めたりできるのであって、決して固定的な位置の固形物のようなものではありません。間違ったイメージが私たちの行動を誤った方向へ導いています。

腰が使えないと足全体が負担になりますが、丹田に寄りかかって姿勢を立てば楽になります。そのためにはまず意守丹田の姿勢を作ります。そしてかかとの上にまっすぐ体重を降ろします。

次に肛門を締めて軽く引き上げて、腰と膝の力を緩めて少しずつ腰を巻き込みます。下についたように感じる場所があるので、その位置を探します。しっかりとしたら、そこに寄りかかるように立ってみます。この姿勢を太極拳では「座る」と表現します。

太極拳は体術ですから、気功によって一定の出力が出せるようにトレーニングをします。つまり格闘技の筋肉トレーニングと同じように丹田を鍛えます。

また老化が足から来るのは丹田が弱った結果です。丹田が弱った状態で足を使うことはできないからです。太極拳は丹田を用いて戦う武術なので、丹田は非常に重要な位置付けを持っています。

まとめると、お腹が弱ると老化が速まる。逆にお腹を養うと若返る、意守丹田して丹田を動かすことで養い育てられるということになりますね。