どうして武術?どれだけ戦える身体なのかが健康のバロメータです

一年前の初夏、同年代の友人が脳溢血で倒れたという報せがあり、驚きました。左前頭部に溢血を起こしたためそれ以降、言葉が不自由になってしまいました。まだ50代前半なのに大変です。

人間は老化するとさまざまな障害を持つようになると年寄りは言いますが、身体のどこから弱っていくかといえば、意識的に使わない部位から老化します。

命に問題がないようなところ、一番イメージしやすいのは足。足から弱っても生命の存続に関わらないですよね。だから生命活動は省エネのために意識しない部分を不要だと判断するといいます。

若返る身体とは、動ける身体を確保すること。でもそれだけでは困ります。動ける身体を支え導く精神が必要だからです。この場合の精神力とは気持ちだと言い換えられるでしょう。そうでなければ、身体は健康でもやる気や根気、集中力をなくしてしまいます。

動ける身体と精神力が必要です。案外気づかないのは、身体に問題があると気持ちがしっかりしないという状態でしょう。高熱が出ていても勤務できる精神力が求められていても実は、単に先天気を蝕んで悪化させてしまう危険が高いのです。

ダメージを受けた精神の回復は、身体の改善より困難です。失恋を癒やす薬がないと言ったりするのはこのためです。気持ちがついてこないのは人間の本質かもしれませんが、日本では特に無視される傾向にあります。

精神と身体とが整えられた身体とは臨戦態勢にある身体ですから、戦える身体は使える身体ということになるでしょう。大きな精神力を必要とせず、身体を整える技術があれば役に立つはずです。

気持ちが弱っていても、練習できる。多少身体が弱っていても、練習できる、そのような具体的手段が若返りに効果的なのですが、健康な身体を作る条件を考えておきましょう。

必要以上の負荷は逆効果になります。短期的に頑張っても、翌日まで残る疲れは積み上がります。たとえ若くても回復には時間が掛かります。特に最近の若者の相談にそのような事例が増えてきたように思えます。若さに頼るのは危険でしょう。

そのように疲労が蓄積した身体では、遅かれ早かれ病気・怪我で破綻します。すると運動できない期間が生じます。これが武術では大問題になります。その期間に攻撃を受ければ、ひとたまりもないからです。

それだけに実践的な武術は、日々の健康管理に慎重です。疲れを翌日に残さない程度の運動が大切になります。そうすれば、訓練を継続でき、積み上げることが可能になるからです。

残念ですが、いわゆる体操は特定の動きに偏りやすいといえます。現代の問題に特定した対策として考案された場合が多く、結果として特定の効果だけを追求したものになりがちです。

太極拳がお勧めな理由もここにあります。太極拳は全身を使う武術です。拳だけを、あるいは脚だけを重点的に使う格闘技ではありません。全身が使用できる状態に保つという要求があります。

翌日に疲れを残さない練習が可能なのは皆さんもご存じの通りで、ゆっくりとした練習方法は筋肉に過剰な負担を掛けない動作であり同時に脳の運動野に速やかに刺激を伝えます。

練習の要諦としても初心者から、気を巡らすために全身に意識を充満させるイメージを要求されますので、無意識になったままになる身体部分が少なくなります。

生徒さんたちにお勧めししているのは、身体や気持ちが辛いときには、週に1回の練習参加で現状維持して、少し気持ちが進むときはもう1回練習に参加することで身体を養うというパターンです。

この方法は思っている以上の効果なので、生徒さんが驚いてしまうようです。効果を確認できる、さらなる若返りに効果絶大なのです。