生まれつき備わっている丹田呼吸は前後の振り子運動になります

丹田とは何か、そして丹田はどのように動くのかと話を続けていますが、ここで丹田の呼吸、つまり往復運動、から先天呼吸になるための方法を採り上げたいと思います。

先天呼吸は表層に上ることなく無意識の中に沈み込んでしまっており、意識的に探して再度活性するのでなければ、私たちはそれと気づくことはないままでしょう。

よく言われるように、先天呼吸そのものを意識したり、作り出そうとすると力が入ってしまって失敗に終わります。先天呼吸とはこれこれこういうものだと解説書を読んで実戦しようとする人に多く見られるパターンですね。

結局、直接習わなければわからないと決心することになりますが、直接先生に話を聞いたところで、先生ごとに表現が違っても、やはり先天呼吸の条件を繰り返されるだけです。

やはり、最初に体験的な理解がなければ、まねることができませんので、学ぶことも難しいという結論に至り挫折してしまうのでしょう。

まず、ゆったりとまっすぐに立ち、そのままリラックスして気持ちを体内の動きに向け、観察するようにします。その状態から、おへその奥に鼓動する小さな動きを見つけ出すことを目指します。

まず意守丹田します。おさらいをすれば、一度ため息をついてお腹の辺りをゆったりと緩めます。すると前後にお腹が膨らみますので、その状態を意識的に保つようにします。

しばらくその状態を維持していると心臓の鼓動、呼吸音が聞こえるぐらいになってきます。その状態を維持していると、丹田がはっきりしてくると同時に濃淡があるのに気づくはずです。

どこが中心かと注意して観察していれば、濃淡は中心を形成します。それを太極と呼びます。太極とは、日本語でいう極点のことです。宇宙の太極といえば宇宙の中心の一点であり、あらゆるものに存在する、中心点も太極と呼ぶのです。

太極(丹田の中心)に意識を集めるように意図して、中心を強く意識します。次は太極の呼吸を誘導します。つまり太極が動き出すように導引するわけです。

意守丹田した状態で太極を真後に動かします、後にひっぱっても緩んだままだから身体は動かないはずです。そのときに背中側が膨れたりしたなら、意守丹田が不十分だったという判断をします。

見つけたらそっと観察を続けて意守するという方法が原則です。そのうち太極は前後に、左右にあるいは拡大縮小をしているのに気づくはずです。これが太極の振り子運動、つまり呼吸です。

観察を継続すると感覚がしっかりとしてくるでしょう。中にある太極の振り子運動に連動して、丹田は運動をしているはず。それが丹田呼吸です。

丹田呼吸を繰り返しているのを見つけたら、それに鼻口の呼吸を任せてみましょう。すると丹田の動きに合わせて、身体全体がわずかに膨れたり萎んだりを繰り返しているはずです。

全身が丹田呼吸に合わせて、膨らんだりしぼんだりしている。丹田の呼吸に任せると自然呼吸が起こって丹田と同期して息を呼吸するようになるのです。身体のわずかな繰り返し運動は鼻口呼吸を促して、全身で呼吸しているような感覚に囚われるでしょう。これが先天呼吸なのです。

先天呼吸は生まれたての赤ん坊の呼吸だと言われます。近くに生まれたての赤ん坊がいるなら、よく観察してみてください。彼らの呼吸は息の出入りに合わせて、身体全体がわずかに膨らんだり萎んだりという拡縮運動を繰り返しているはずです。

この先天呼吸の状態を維持しつづけるのが仙人の修行のひとつとも言われています。つまり長寿に直結すると考えられていたのであり、若さを保ち、全身に必要な養分を運ぶと考えられていたようです。先天呼吸は私たちの中に実際にあります。