太極拳ならすべて共通!上達の前提としてのファンソンを理解する

力を抜こうと思えばできるのですか?そんな馬鹿げた質問を教室の先生にぶつけてみました。先生は「できるけど、むずかしいね」と答えました。その先生がとても正直な人柄だということは分かります。

でも、どうすれば良いのかはさっぱりわからないままです。力はただ何の工夫もなく力を抜こうとしても抜けません。だって無意識のうちに緊張が染みついたように身体の中で頑張っているのですからね。

あまり考えないことかも知れませんが、身体は立った状態を維持しようとします。別の先生がこっそりと、立っているときは倒れようと思わない限り倒れないと教えてくれました。その先生はもうずいぶん前にファンソンをあきらめたと言ってました。

なぜそうなのか、しばらく考えてみました。姿勢の維持に力が必要であれば、無意識に力が入るからだと気づいたのはだいぶ立ってからです。立っている姿勢そのものが緊張を要求します。

それならば、立ったままでできるリラックスだというのは、矛盾しているようですが、同時にヒントにもなっていますね。つまり立ったままでのリラックスは特定の状態を指しているはずだからです。

リラックスならなんでも良いという訳ではなさそうです。実際力が抜けた状態はファンソンではないともいいます。その理由はあまりにも当然のことです。力を抜くことに意識を集めると動けなくなるからです。

これらの条件を考え合わせて、見つけた方法をここでみなさんにお教えしますね。慌てないで一つずつじっくりと読みながら、やってみて、身体の反応に注意してみてください。

ため息をつくとお腹が前後にわずかですが膨れます。この状態のお腹の辺りを今、丹田と呼びますと、前後に膨れたお腹を維持するのを意守丹田というふうに呼ぶことになります。

単にイメージするだけだったり、なんとなく思ったりではなく、具体的な身体操作を指しています。ほとんどすべてはこんな調子で具体的に実験的操作になっています。

そしてかかとの真上に丹田が来るように注意します。丹田とかかとのラインが維持できるようにバランスをとりますが、これに習熟すると動作の軸を感じるようになってきます。

次に、丹田を下げれるところまで下に押しつけるようにしてみましょう。膝が地面に対して直交していると、わずかに下がるだけでほとんど沈まなくなるでしょう。それで大丈夫です。

股関節がだんだんと緩んでくると、下に下がる度合いが増えてきます。大切な点は膝を曲げて力を逃がさないのがポイントです。丹田が生み出した力は一旦地面に降りて、その後、丹田に戻って全身を巡ります。膝で力を逃がすと全身を使えません。

このような練習に慣れると意識を動かすだけで、可能になってきます。完成したイメージを頭で再現して、感じるようにするだけで、身体が従うようになります。

これが太極拳・気功の放松のやり方です。このようにして中丹田を実にすると上下丹田は虚になります。つまり心臓や緊張のもとである上下の隣接した丹田は力が抜けるようになります。

実になっている部分の周囲は力が抜けるのが虚実の原理です。そして周囲の身体は実になっている丹田に寄りかかるようにして姿勢を維持できるようになっています。

太極拳がこのような練習を立ったままで行うのには大切な理由があります。中にはどんな姿勢でも同じだと説明する先生もいらっしゃいますが、それは慣れた人の話でしょう。立ったままで体感するのが一番簡単な方法なのです。

多くの生徒さんたちにこの方法を、教えてみましたが、ほぼ全員が不思議な感覚だと言います。メソッドとできたときの感覚が必要だったのですね。