どれも同じだと聞いたよ?伝承の歴史が多くの流派を生み出しました

日本に太極拳を伝えた最初期の人に、太極拳はどれも同じという人もいるのは事実です。だからこそどの太極拳でも同じだと思って、始める人も少なくありません。

日本に伝わった太極拳にも多くの流派があります。実際に選ぼうとすると困ってしまうほどです。同じだと思って始めるのはよいのですが、一生懸命になったあまり、身体を壊してしまったという本末転倒した経験を持つ人も実は多いのです。

太極拳は、ゆるゆると練習して気長に付き合うのが原則だから、一生懸命になるのが誤りだという指摘は、そうかも知れませんが、そのような人を目の前にすると悲しい思いに駆られます。

あまりに多い太極拳の種類をここで網羅するのは困難です。ですから、全体的な太極拳から有名な流派をいくつか取り上げて、説明することになります。

中国武術としての太極拳は内家拳なので、いずれの太極拳も内家拳です。外家拳であれば、西洋思想と同様の筋骨主義で、筋肉トレーニングをして基礎力を養いますが、内家拳は違います。

内家拳は内功と呼ばれる内部を持ちます。広い意味では、内功は技術、知識、用法などを含みますが、狭い意味では、内家拳の基礎力を指します。

そのため内功の養成が必要になります。内家拳らしい方法しては気功を学ぶという場合が多いようです。その結果、求める基礎力にも違いが生じて、各流派の風格を作り出します。

伝統拳として代表格の一つである陳式太極拳は纏絲勁(てんしけい)を用いますので、それにふさわしい練習方法を取り入れますし、その結果身につく力も陳式らしいものになります。

一方、楊式太極拳では抽絲勁(ちゅうしけい)をいますので、柔らかさを追求した動きを身上にします。ひたすら柔らかい太極拳のイメージはこの楊式太極拳から来ているようです。

そして日本でもっとも入門者が多いと言われる簡化24式太極拳は、別名「制定拳」といわれ、1956年中国の国家体育運動委員会の指導で制定されました。

制定拳はしかし、武術として考案されたものではなく、国民の健康増進のための体操として企画されました。従って、内家拳に分類して良いのか、そもそも武術なのかと問えば、即答するのが難しいものになってきます。

その他にも伝統拳に分類されるものに、初めて太極拳を体系化武式太極拳、実戦志向の呉式太極拳、中国内家拳の総合ともいえる孫式太極拳などを挙げる人も多いでしょう。

武術としての要件を備えた伝統太極拳だけでも、これら以外にまだまだ数が多いです。インターネットを検索すれば、聞いたこともないような太極拳に出会えると思います。

伝承した人の考え方によって変化しても、太極拳だということですね。つまり内功は違っても流派は変化しないが、見た目が変われば流派が違うという不思議な面を持っています。

それでも内家拳としての太極拳にとって大切なのは内功なので、流派が違っても優れた内功を求めれば良いのです。教室によって内功を重視しているところと、そうでもないところとが実際あります。

もし内功を重視しない教室に入門してしまったら、早晩問題を生じることになるかも知れません。あるいはその教室の内功が気功であれば、例えば「五禽戯」や「十八段錦」など制定拳と同じく中国政府が制定したものを用いてる場合も多いようです。

入門前に、教室の先生に相談して始める慎重さが必要かも知れません。私のついている先生は昔何度も「三年師を求める」というようなことを言って、先生を選ぶことの大切さを説いていました。

太極拳であれば、違いがあっても太極拳なのでしょうが、その小さな違いが大きな要素になっている可能性があります。]